農園型障害者雇用とは?仕組み・問題点と厚生労働省の見解、働く前に確認したい7つのこと

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「障害者雇用の求人を探していたら、勤務地が『農園』だった」「企業に雇われるのに、働く場所は会社とは別の農園ってどういうこと?」。最近、こうした求人を目にする人が増えています。

これは「農園型障害者雇用」と呼ばれる働き方です。企業に正社員や契約社員として雇われ、別の会社が運営する農園で野菜やハーブの栽培などを行います。一方で、厚生労働省はこうしたサービスを「いわゆる障害者雇用ビジネス」として実態を調べ、懸念している点も公表しています。

この記事では、厚生労働省の資料をもとに、農園型障害者雇用の仕組み、広がり、メリットと問題点、そして働く前に確認しておきたいことを、障害者雇用・就労支援の現場に関わってきた立場から整理します。

この記事の結論

  • 農園型障害者雇用は、企業が障害者を雇い、別の会社が運営する農園で働いてもらう仕組み。厚生労働省は「いわゆる障害者雇用ビジネス」と呼んでいる
  • 就業場所は全国で223か所(うち農園153か所)、働く障害者は11,241人以上(2025年11月末時点、厚生労働省が把握できた範囲)
  • 厚生労働省は「雇用率を満たすことだけが目的になっていないか」「仕事の量や中身、将来のキャリアは十分か」などを懸念している
  • 働く前に、雇い主・契約期間・仕事の中身・相談相手・将来の配置転換を確認することが大切。キャリアを広げたい人は、障害者専門の転職エージェントでほかの求人とも比べるのがおすすめ

農園型障害者雇用とは?仕組みをわかりやすく

農園型障害者雇用は、3つの立場の会社・人で成り立っています。

農園型障害者雇用の仕組み:農園の運営会社が区画・設備を企業に貸し、企業が障害のある人を雇って農園で働いてもらう
立場 役割
農園を運営する会社(サービス事業者) 農園の区画や設備を企業に貸し、作業内容や運営のノウハウを提供する。障害者の送迎や健康チェックなどを行う場合もある
サービスを利用する企業(雇い主) 障害者を雇用し、借りた農園で働いてもらう。障害者の雇用率に算定される
障害のある人(働く人) 利用企業と雇用契約を結び、農園で野菜やハーブの栽培・加工などの作業をする

ポイントは、雇い主は利用企業で、働く場所と仕事の中身はサービス事業者が用意していることです。厚生労働省は、こうした「障害者の就業場所となる施設・設備(農園、サテライトオフィス等)及び障害者の業務の提供等を行う事業」を、いわゆる障害者雇用ビジネスと呼んでいます。農園のほかに、サテライトオフィスで働く形もあります。

作られた野菜やハーブは、社員に配ったり、子ども食堂に寄付したりするなど、福利厚生や社会貢献として使われることが多く、販売による収益はほとんど見込まれていない例があることも、厚生労働省の資料で紹介されています。

農園型障害者雇用はどのくらい広がっている?

厚生労働省は、2022年1月から都道府県労働局に指示し、障害者雇用ビジネスの事業者や利用企業の実態把握を続けています。公表されている数字は次のとおりです。

障害者雇用ビジネスの広がり:就業場所125か所→223か所、うち農園91か所→153か所、事業者23→46(2023年3月末→2025年11月末、厚生労働省)
項目 2023年3月末時点 2025年11月末時点
事業者数 23事業者 46事業者
就業場所数 125か所 223か所
うち農園 91か所 153か所
うちサテライトオフィス 32か所 58か所
利用企業数(延べ) 1,081社以上 1,803以上
働く障害者 6,568人以上 11,241人以上

出典:厚生労働省 労働政策審議会障害者雇用分科会 第128回(2023年4月17日)参考資料3、第136回(2025年12月22日)参考資料3。事前の届出制度はなく、労働局の訪問などで把握できた範囲の数字です。

約2年半で、就業場所はおよそ1.8倍、働く障害者も1.7倍ほどに増えています。就業場所のうち、農園がいちばん多い形です。

背景には、企業に義務づけられている障害者の雇用率の引き上げがあります。民間企業の法定雇用率は2026年7月から2.7%に上がり、従業員37.5人以上の企業が対象になりました。自社の中で障害のある人に任せる仕事を作れない企業が、こうしたサービスを利用するケースがあると考えられます。

働く人から見たメリット

農園型の働き方には、合う人にとっては次のような良さもあります。

  • 企業に雇用される:就労継続支援などの福祉サービスとは違い、企業と雇用契約を結ぶ働き方です。最低賃金以上の給料が支払われ、社会保険に入れる場合もあります
  • 作業が決まっていて覚えやすい:栽培や水やり、収穫、袋詰めなど、手順が決まった作業が中心です
  • 人の多いオフィスが苦手な人も働きやすい:少人数で、静かな環境で働けることがあります
  • 送迎や見守りがある場合も:事業者が集合場所への送迎や健康チェックを行っている例が、厚生労働省の資料で紹介されています

はじめて企業で働く人や、長く働いていなかった人が、生活リズムを整えながら働き続ける場として役立っているケースもあります。

農園型障害者雇用の問題点:厚生労働省が懸念していること

一方で、厚生労働省は把握した事例をもとに、いくつもの懸念を示しています。働く人の立場で大事なものを整理します。

1. 雇用率を満たすことだけが目的になっていないか

雇用率の達成を指導されている最中に利用を決めた企業や、作った野菜をどう使うか決めないまま利用を始めた企業の例が挙げられています。厚生労働省は、障害のある人が「経済社会を構成する労働者の一員として能力を発揮する機会」になっているかを問題にしています。

2. 仕事を選んでいるのが雇い主ではない

仕事の中身はサービス事業者が決めることが多く、利用企業は障害者に任せる仕事を自分で考える必要がありません。そのため、能力を発揮しやりがいを持って働ける仕事にならないこと、入社後に社内で仕事の幅を広げる機会が少ないことが懸念されています。

3. 仕事の量が十分か

労働局の訪問で、仕事の量が適切か疑問のある例があったこと、「仕事量が少なく休憩時間が多い」と話す障害者もいたことが報告されています(事業者側は「能力に照らして十分な業務量」と説明)。

4. 契約の更新や無期雇用への転換

1年ごとに同じ農園の別の利用企業の障害者と入れ替えることで、無期雇用への転換ルールを避けられる、と説明する資料を事業者が配っていたケースがありました。厚生労働省は、無期転換を避ける目的での雇止めは労働契約法の趣旨から望ましくなく、無効とされる場合があると注意しています。

5. 雇い主が現場を見ているか

利用企業が現場に管理者を置かず、メールやオンラインで勤怠管理や業務の指示をしている例、管理者が休みの日は全員休みにしている例も挙げられています。困ったときに誰に相談すればよいのか、配慮が必要なことを雇い主が把握しているのかが問われています。

厚生労働省・労働局はどう対応している?

労働局は、仕事の内容や量、雇用期間や労働時間などの労働条件、勤怠管理や業務指示の流れを把握し、必要に応じて就業場所や利用企業を繰り返し訪問しています。不適切な事案には改善指導を行い、企業に対しては障害者雇用促進法の基本理念や事業主の責務を理解するよう促しています。

また、企業に望ましい取組として、障害者が能力を発揮できる仕事を自社で選び・作ること、定期的な面談で体調や配慮を確認すること、評価や処遇に反映させることなどを示しています。実際に、農園から利用企業の本社の人事担当に異動したケースや、「将来は自社内への配置転換を考えたい」という企業の例も紹介されています。

つまり、農園型だから一律に悪いのではなく、雇い主がどれだけ主体的に雇用に向き合っているかで、働く人にとっての中身が大きく変わるということです。

農園型の求人に応募する前に確認したい7つのこと

農園型の求人に応募する前に確認したい7つのこと

面接や見学のときに、次の7つを確認しておきましょう。聞きにくいことは、支援機関や転職エージェントの担当者に確認してもらう方法もあります。

  1. 雇い主はどの会社か:雇用契約を結ぶのは利用企業です。会社名と、どの部署の所属になるのかを確認します
  2. 契約期間と更新:有期契約か無期契約か、更新の条件、何年まで更新できるかを確認します
  3. 仕事の中身と1日の流れ:どんな作業を、どのくらいの量するのか。作業がない時間は何をするのか
  4. 困ったときの相談相手:現場に雇い主の会社の管理者はいるか。体調や配慮の相談はだれにするのか
  5. 将来の配置転換やキャリア:本社や別の部署で働く道はあるか。実際に異動した人はいるか
  6. 給料と最低賃金:時給・月給と、昇給や賞与の有無。最低賃金はどの地域の金額が適用されるか
  7. 通勤と勤務時間:送迎の有無、勤務時間が送迎バスの時間に合わせて決まっていないか

農園型が合う人・合わない人

合いやすい人 合いにくい人
  • まずは生活リズムを整えながら、企業で働く経験を積みたい
  • 人の多い職場や、電話・来客対応のある仕事が負担になる
  • 体を動かす作業や、決まった手順の作業が好き
  • 事務やITなど、これまでの経験やスキルを生かしたい
  • 給料を上げたい、役割を広げたいなど、キャリアアップを目指したい
  • 会社の一員として、本業の仕事に関わりたい

農園型が合うかどうかは、今の体調や働く目的によって変わります。「とりあえず雇ってもらえるから」で決めるのではなく、ほかの求人とも比べてから選ぶことが、長く働き続けるためのいちばんの近道です。

キャリアを広げたいなら、障害者専門の転職エージェントで比べる

農園型の求人しか見つからない、と感じている人もいるかもしれません。しかし、障害者雇用の求人は、求人サイトやハローワークに出ているものだけではありません。障害者専門の転職エージェントに相談すると、事務・IT・軽作業など、ほかの働き方の求人も紹介してもらえます。配慮してほしいことの伝え方や、面接対策の相談もできます。

エージェントはサービスごとに得意な地域や職種が違うので、2〜3社に登録して比べるのがおすすめです。それぞれの特徴は、下の記事で詳しくまとめています。

障害の種類ごとのおすすめは、障害者のエージェントや就職サイトの特徴まとめでも紹介しています。

よくある質問

農園型障害者雇用は違法ではないのですか?

農園型のサービスそのものを禁止する法律はなく、事業者に届出を求める制度もありません。ただし、厚生労働省は懸念点を公表し、労働局が実態把握や指導を続けています。個々の職場で、雇用契約や働き方が適切かどうかが大切です。

農園で働くのは「一般就労」になりますか?

利用企業と雇用契約を結んで働くので、就労継続支援などの福祉サービスではなく、企業での雇用(一般就労)にあたります。

給料はどのくらいですか?

求人によって違いますが、雇用契約なので最低賃金以上の給料が支払われます。農園など本社から離れた場所で働く場合は、どの地域の最低賃金が適用されるかに注意が必要と、厚生労働省も指摘しています。

農園から本社の仕事に移ることはできますか?

農園から利用企業の本社の人事担当に異動したケースが、厚生労働省の資料で紹介されています。ただし、すべての企業でそうした道があるわけではないので、応募前に確認しておきましょう。

家族が農園型の求人を見つけてきました。どう考えればいいですか?

本人の体調や希望に合っていれば、働く経験を積む場として選ぶ価値はあります。この記事の7つの確認事項を、本人と一緒に確かめてみてください。ほかの求人と比べたいときは、障害者専門の転職エージェントや、地域の就労支援機関に相談するのもおすすめです。

まとめ

農園型障害者雇用は、企業に雇われて農園で働く仕組みです。合う人にとっては働く経験を積む場になる一方で、厚生労働省は、雇用率のためだけの雇用になっていないか、仕事の量や中身、将来のキャリアが十分かといった点を懸念しています。

応募する前に、雇い主・契約期間・仕事の中身・相談相手・将来の配置転換などを確認し、ほかの求人とも比べてから決めましょう。障害者専門の転職エージェントを使えば、自分に合う働き方の選択肢をもっと広げられます。

※厚生労働省「いわゆる障害者雇用ビジネスに係る実態把握の取組について」(労働政策審議会障害者雇用分科会 第128回・第136回 参考資料3)をもとに作成しました(2026年10月28日確認)。

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